BLOGしょう先生のブログ
おはようございます。毎朝7時に更新中のしょう先生のブログにお越しくださり、ありがとうございます。
今日は、最近テレビで見た、ちょっとショッキングな出来事について、お話したいと思います。
目次
衝撃の広告
先日テレビを見ていたら、マウスピース矯正の広告が流れていました。
医療業界は広告に関する規制が厳しいので、美容整形を除くテレビCMはめったにお目にかかりません。
「えっ!?」と思って、食い入るように見ていたら、次第に違和感が。
これでは患者様が誤解してしまうのではないかと思いました。
次の日、ジムに行ったらジムのインストラクターさんも広告を見たそうで、「あんなに安く矯正できるんですか?」と聞かれました。
うーん…やっぱりこれは誤解を招くかも。改めてそう感じました。
その日以来、私のInstagramにも頻繁に広告が上がってきます。
気になるので、ここで一旦私の考えをまとめておきたいと思います。
巧妙な広告なので、普通に説明しても分かりにくいんです。
なので、私は少し切り口を変えて、例え話で説明してみたいと思います。
もしもシリーズ2連発!いってみましょう!!
もしも話その1【もしもこんな美容院の広告があったら】
サギー「みなさんこんにちは!美容マニアのサギーヒカルです。突然ですが、美容室って高いですよね~」
ガヤ「高い~」
サギー「ほんの2時間、3時間で10000円なんて当たり前!とってもきれいになったけど、お財布の中身はからっぽ。それでみなさんの心は満たされますか?」
ガヤ「イヤダ~。ミタサレナーイ。」
サギー「そこで今日ご紹介するのは、このウルトラ美容室!なんと、15分できれいになれちゃう!今日の私の髪も、ウルトラ美容室で切ってもらいました!いかがですか?このツヤ!そして整った毛先!!なにより15分!忙しい貴方の時間を奪いません!」
ガヤ「キレーイ」
サギー「高いと思うでしょ?でもね、なんとお値段は驚きの1500円!!」
ガヤ「エエ~スゴーイ(拍手)」
サギー「みなさまもぜひ、ウルトラ美容室で美しさを手に入れませんか?電話番号は●●●…」
さて、あなたはこのウルトラ美容室に予約の電話を入れますでしょうか?
もしも話その2【もしもこんな貸衣裳屋の広告があったら】
吹代「こんにちは、和服コーディネーターの洞 吹代です。みなさん、お友達の結婚式への参列、どうされていますか?お着物、着られますか?」
通りすがりの人A「お着物って高いですよね」
通りすがりの人B「お手入れ大変だし…」
吹代「レンタルされるのはどうですか?」
A「レンタルしても、結局10000円以上かかっちゃうしね」
B「そうそう、ご祝儀も包まないといけないし」
吹代「そんなあなたにうってつけなのが、このお店「超和服」さんです!」
吹代「こちらの超和服さんで和服を借りると、なんと1日借りても2000円!」
B「えっ、やすーい!」
吹代「結婚式の準備が2000円でできちゃうなんて、素敵ですよね。ぜひみなさん、超和服で素敵なお着物を!!」
こちらのお着物、はたして本当にお得なんでしょうか?
巧妙な話のすり替え
みなさんこの2つのCMを見て、どう思われましたでしょうか。
まず1つ目の美容室のお話、こちらはほとんどの方が騙されないと思います。
美容マニアのサギーがご紹介しているウルトラ美容室は、カットのみのご提供です。
駅とかにもありますよね。短時間できれいにカットしてくれるお店。
このトークのまぎらわしいところは、最初に「2時間、3時間もかかって1万円以上かかる」と言っている、つまり会場にいるガヤの皆さんが想像しているのはパーマとかカラー、シャンプーなどさまざまな施術なのに、そこにカットのみの話を持ち込んでいること。
もちろん、この美容室が気になった方はネットで調べると思います。
そこにはきちんと書いてあるのです。「カットのみの料金です」と。
でも、ちょっといやらしいですよね。
もう1つの貸衣裳屋の超和服さんも、1日2000円の和服は単にレンタルだけ。
着付けもないし、ヘアメイクもありません。さらに使った和服はクリーニングをして返さないといけないという規約付き。
これもホームページを見れば、きちんと書いてあります。
通りすがりの人AやBは結婚式の準備として、さまざまなことを脳内に描いているのに、話し手の吹代はあくまで着物そのものの値段を伝えているにすぎないのです。これって、なんだかずるいと思いませんか?
(だんだん混乱してきた方がいるといけないので補足ですが、ここに書いている美容室や貸衣装屋はありません。例え話です。)
一見安価な矯正も同じ
安価な矯正治療に関しても、上記と同じで、ホームページをよく見ると「難しい歯並びはできない」と書いてあります。
また、「前歯のみを動かす」とかも書いてあります。なので、嘘は書いてないんです。
でもそれならば、上記のサギーや吹代と同様で「高いですよね」として引き合いに出す比較対象が異なりますよね。
「高い」として引き合いに出されている矯正歯科での矯正治療ですが、それはあくまでも全部を治した時の治療代金になります。
サギーのウルトラ美容室はカットのみなのですから、それならば他の美容室の「カットのみの料金」と比較して広告すべきだと思うんです。
・A店でカットのみの料金
・B店でカット+シャンプー+パーマの料金
この2つを比較したら、そりゃカットのみのA店の料金の方が安いですよね。
矯正歯科でも、前歯だけの矯正、すなわち部分矯正は行っています。
なので、今絶賛広告中の格安矯正は、矯正歯科で行われている部分矯正と値段比較をすべきではないかと思うんです。
部分矯正との料金比較をするならばまだしも、全体の矯正と比較して、すごく安い矯正がありますよ!と広告するのは、私はなんか違うんじゃないかなと思ってしまいます。
・A社の部分矯正の料金
・B社の全体の歯の矯正の料金
これを比べたら、絶対A社が安いですよねって話です。
どうでしょう。ご理解いただけましたでしょうか。
部分矯正の落とし穴に気を付けて
そして、ここからは少し話が変わります。
これは以前の記事でも書いているのですが、格安矯正治療は歯科医院の広告として、戦略的に用いられている可能性があります。
普段から「矯正したいな、でも高いな」と思っている患者様がいたとします。
その方がもし、「5万円で矯正できます!」って記事を見たら、その歯医者に行って話を聞いてみようと思いますよね。
その「歯医者に行ってみようと思わせる」ために広告として使われるのです。
そして、実際に来院された方には、その5万円の矯正では治療できない理由を説明し、本来の矯正を薦める。
もうここまで来ちゃったし…なんとなくその気になっている私。その医院で矯正を始めちゃう、なんてこともあるわけです。
あなたはその歯科医院に、格安矯正があるからと足を運んだんですよね?
格安じゃないなら、他の歯科医院でも良かったのではないですか?
…と、誰かに言われてみたら気付くのですが、ほとんどの方はそのことに気づかないのです。
こういった広告は、私は好きではありません。
でも、その手法を批判することはできません。
犯罪ではないですし、他の物やサービスを売るときでもよくある方法ですよね。
「無料でパンをプレゼント!」と言ってご高齢の方を集めて健康セミナーをやって、そのあとでいろいろな商品の紹介をしたりする商法が話題になったことがあります。
また、詐欺まがいの商法でなくても、通販で「初回に限りもう1袋サービス!」とか、「無料体験会実施中」として初回のハードルを下げて人を集めることはビジネスとしては普通のことかと思います。
それを医療にも応用するのか?というところは、それぞれの歯科医師の倫理観によると思います。
どちらが良い・悪いという話ではないと思います。
まとめ
安価な矯正を広告すること自体に関しては、私は自由にして良いと思います。
ただ、比較するならば、きちんと同等の物、同等の技術やサービスと比較してほしいなと、切に願います。
いかがでしたでしょうか。皆さんが納得できる歯科医院を選べるお手伝いになれば嬉しいです。