BLOGしょう先生のブログ
おはようございます。今日は六甲ライナーから見える夕焼けを撮影してみました。
窓ガラスが写ってしまうので、撮影は難しいですね…
さて、今日は「ご褒美」のお話です。
目次
「終わったら買ってあげるから」
いやだいやだと泣き、ぐずる子の前で、「ほら、これ終わったらお菓子買ってあげるから!」
そんなセリフ、聞いたことありませんか。
あるいは、ご自身が言っているという方も多いのではないかと思います。
●●したら、ご褒美あげるから、という言い方、気になりませんか?
私は昔から気になっていました。
自分がもらう側の立場の時も、気になっていました。
大人になってもありますよね。
目標を達成したら旅行に行ける、とか。
物で釣っている感が嫌だなって思ってました。
歯医者でも、終わったらご褒美がもらえる医院がある
お子さんにとって、歯医者は最低の場所です。
痛い、臭い、こわい…
そんな歯医者を少しでも好きになってもらおうと、あの手この手で歯医者はお子さんをなだめます。
そのなだめ方はそれぞれで、大量のおもちゃが置いてあったり、遊具があったり。
テレビマンガがずっとテレビに流されていたり。
その中の1つに、
「終わったらケシゴムがもらえる」とか
「終わったらシールがもらえる」などのご褒美を設定している医院も多くあります。
実はこれって逆効果
歯医者を嫌がるお子さんに「ご褒美がもらえるから」と、お母さんがお子さんをなだめると、歯医者には連れていきやすくなりますよね。
また、お子さんが歯医者を好きになるという点では、とても良いように思えます。
…が、しかし。
これ、ダメな子を育てるのではないかと言われています。
そして、良かれと思って歯科医師がやっているこの「ご褒美制度」が、「予防歯科」の概念とは逆の結果になってしまう可能性があるんです。
詳しく解説しましょう。
心理学で解明された、ご褒美の悪影響
心理学で、アンダーマイニング効果というものがあります。
それは、簡単に言うと、「ご褒美をもらうことが目的になる」という効果です。
例え話として、保育園に通う「ひまりちゃん」の変化について、お話したいと思います。
ひまりちゃんは絵本を読むのが大好きです。
いつも、何も言わなくても、絵本を読んでいます。
ひまりちゃんのお母さんは、「きっとこの子は賢くなる!もっと本を読んでほしい!」と思いました。
そして、お母さんは言いました。
お母さん「ひまり~その本読み終わったら、お菓子をあげるね」
ひまり「えっ、お菓子!!わーい!!」
お母さんはひまりちゃんにお菓子をあげながら、これでもっともっと本を読んでくれるわ!と思いました。
翌日も、その翌日も、毎日絵本を読むたびにお菓子をあげることにしました。
1週間が経ち、お母さんはあることに気づきました。
ひまりちゃんが、絵本を読みながらお母さんの方をチラチラ見ているのです。
お母さんがどんなお菓子を用意しているのか、気になって仕方がないようです。
「おかあさーん、読み終わったー。」
「えっ、もう読んだの?」
いつもなら10分ぐらい絵本に没頭しているのに、5分ぐらいで絵本を閉じて、食卓に座りました。
最初の頃は1日に1冊の絵本、1回のお菓子だったのですが、最近は1日に3冊の絵本、3回のお菓子になっています。
でも、絵本を読む時間は全部で10分ぐらいと変わっていません。
お母さんは、こんなにお菓子を食べたら、太るし、体にも良くないわ…と考えを改めました。
「ひまり、明日からはお菓子はなしね。」
「えーなんでー」
「お菓子ばっかり食べたら豚さんになっちゃうよ」
「はーい。」
そして翌日。
「ひまりー、本は読まないの?」
「読まなーい。」
「どうして?」
「だってお菓子ないもーん。」
そうです。ひまりちゃんはお菓子が貰えないからと、本を読まなくなったのでした。
その後、絵本も読まず、本も読まないひまりちゃんがどうなったのか。
それは、誰も知りません。
ご褒美のために動く子
元々は「好きだから」読んでいた絵本なのに、「お菓子を貰えるから」読むことになった絵本。
興味のあったことが、単なる過程になってしまったのですね。
これを、アンダーマイニング効果と言います。
アンダーマイニング効果の研究では、
・ご褒美の存在を知っていると、集中力が低下する
・物事への興味、関心が半分になる
と言われています。
歯医者でご褒美をあげると
これを歯医者で置き換えると。
「治療頑張ったらお菓子あげるから!」
「これが終わったら消しゴムあげる!」
という言葉や、システムとしてご褒美がもらえる医院システムがこれにあたります。
確かに1回、2回の治療を、なんとかなだめすかして乗り越えたい!という場合には良い効果をもたらします。
しかし、本人はあくまでも「お菓子や消しゴムをもらうため」に頑張るだけであって、その過程である歯の治療には興味も関心もありません。
その結果、また虫歯を作って来院するはめになるのです。
今は予防の概念が大切なのに…
みなさんは、「歯の予防」とか、「予防歯科」という言葉を聞いたことがありますか。
昔の歯医者は「虫歯になったら行く」「歯が痛くなったら行く」場所でした。
しかし今は「虫歯にならないように、なっても早期発見できるように検診を受ける」「痛くならないように検診に行く」場所に代わっています。
しかし、今もそのような予防の知識がない方は、歯が悪くなるまで放置しています。
そして、痛くなったら連絡をして、「予約が取れない」と嘆く。
それは、一昔前の歯の考え方なんです。
お子さんも、歯が痛くなってから行くのではなく、悪くなる前に行くことで、歯医者の大切さを学ぶことが大切です。
しかし、幼い子がせっかく予防のために歯医者に行っても、結局「ご褒美がもらえるから行く」となってしまえば、「歯を診てもらうこと」への関心は、ご褒美がない場合の半分になってしまいます。
これでは、歯医者へ通うことが長続きしませんし、歯科衛生士が一生懸命歯磨きの指導をしても、子どもたちはおもちゃのことで頭がいっぱいで、歯磨きへの関心はあまりありません。
歯医者に来てもらうため、歯医者さんはあの手この手で頑張っていますが、そのご褒美が結果的に子どもの歯への関心を下げるとは、なんだか皮肉なお話ですよね。
当院でも、毎回のご褒美はありません。でも。
上記の理由から、当院でも毎回のご褒美はありません。
でも、何もないわけでもないんです。
治療が終わった後に、たまに、ご褒美をあげることもあります。
これは、何かをする前にご褒美があるとお知らせするとアンダーマイニング効果が働きやすいのに対して、何かが終わった時にもらえると分かったご褒美に対しては、アンダーマイニング効果が発生しにくいと言われているからです。
ご褒美を期待するような頻度ではあげませんが、何かを頑張ってくれた時とか、時々はご褒美もあげたいなと思っています。
一番のご褒美は、言葉で表現すること
物をあげることが喜びにつながるのは誰しもがそうですが、ただ、物よりも言葉が大切ではないかな?と思っています。
「おもちゃを買ってあげるから、◎◎しなさい」というのは、本当に簡単な、てなずけ方だとは思いますが、人としてちょっと悲しいようにも思います。
三川矯正歯科では、言葉を大切に、お子さんに丁寧な言葉がけをして、予防歯科の大切さを分かってもらえるよう頑張っていきたいと思っています。
お子さんは十人十色で、全てがうまくいく子育て法なんてありませんから、私たちのやり方が正しいかどうかは分かりません。
でも、医院としてこのような考え方で、患者さんと接していきたいと考えています。
今日もお読みくださり、ありがとうございました!