BLOGしょう先生のブログ
おはようございます。今日もお越しくださり、ありがとうございます!
今日は、「学校歯科検診」についての、私の個人的考えを綴りたいと思います。
目次
歯科検診のお手伝い
私は年に1回、知り合いの先生の歯科検診をお手伝いしています。
小学校の歯科検診は、ものすごい人数を一度に診なければなりません。
1学年80人いるとして、6学年を1人で診るとしたら…なんと480人!
1人あたり1分で診ても、8時間かかります。
2日がかりで診る先生もいらっしゃいます。
小学生はこちらの言うとおりに大きなお口を開けてくれない子もいたり、歯医者が怖くてずっと口を閉じている子や号泣している子もいるので、一筋縄ではいきません。
おまけに歯医者の椅子とは違い、保健室の普通の椅子に座っている子どもたちの口の中を覗き込むので、ものすごく変な体勢での診察になります。
ライトも不十分で暗いですし、腰も痛いし…めちゃくちゃ大変なのが歯科検診です。
学校歯科検診の意味って何だろう?
皆さんは、学校の歯科検診で「虫歯あり」と紙をもらったけど、実際に歯医者に行ったら虫歯じゃなかった経験はありませんか?
時間の無駄だったわ…と嘆く親御さんのお気持ちも分からなくはないのですが、私は「虫歯じゃなくて良かった」と考えていただきたいと思っています。
私も歯科医師としての経験が長くなってきましたが、ぱっとお口の中を診たときに、
「あ、この子は大丈夫」
「うわ、この子は虫歯ありそう」
などがなんとなく感じられるようになってきました。
そして、初見で虫歯がありそうな子は、口の中を診るとやっぱり虫歯があることが多いです。
例えば、皆さんがもし、10年以上使われていない廃校に足を踏み入れたら、「うわ、ゴキブリとかでそう」って感じそうな気がしませんか?
そして、やっぱりそういう場所にはゴキブリが出てくるわけです。
あ、幽霊も出てくるかもしれませんが、そちらは私は見えませんので、ゴキブリにしました。
歯科検診もそれと似たようなもので、直感的にこの子は危ない(リスクが高い)と感じた子の口の中には、虫歯があります。
また、虫歯がなくても、虫歯になりそうな歯があります。
そういったお子さんには、歯医者に行ってきちんと調べてほしい、そして、親御さんにももっと歯の健康に意識を持ってほしい、と私たちは考えます。
もし「虫歯がなかったのに、歯医者に行かされた」と感じられた方は、その歯科検診の紙の裏に隠された、歯科医師からのメッセージに耳を傾けてください。
歯科検診には
・虫歯など疾患の早期発見
という意味もありますし
・親御さんへの啓蒙活動
という側面もあると私は思っています。
「今回は虫歯がなかったけれど、これから新しい虫歯ができないように家での歯磨き頑張ろう!」と思ってもらえると嬉しいです。
歯ならびに関する歯科検診の基準
歯科検診では、さまざまなチェック項目があります。
・顎の関節の状態
・歯垢の量
・歯ならび
などなど、それぞれについて評価をしていきます。
ただ、矯正をずっとしてきた私としては、声を大にして言いたいことがあります。
それは、学校歯科検診の歯ならびに関する基準は、「超甘い」です!!
学校のテストに例えるなら、
60点の歯ならびだったら合格
40点の歯ならびだったら合格(要観察の紙が渡される)
20点の歯ならびでようやくアウト(要治療の紙が渡される)
ぐらいの感じです。
学校からもらった紙に、歯ならびについては何もチェックついてなかった…と喜ばれる方もいらっしゃるのですが、それは違います。
学校歯科検診の基準で評価すると、ほとんどの人に「要矯正」のチェックをつけることができないんです。
20点の歯ならびの人しか、要矯正とお伝えできないんです。
本当にもどかしいです。
歯科検診をしながら、「ああ…この子は今のうちに矯正しておけば大人になってから楽になるのに」と何度思ったことか。
でも、全国で定められた基準がありますので、それに従うしかありません。
いつも黙って基準に則って検診を行っています。
全国平均を上回ってはいけないのか
毎年ぐっとこらえて検診をしているのですが、今年検診にお伺いしたところ、こんなことを言われました。
「昨年の要矯正の生徒数が、全国平均を大きく上回っていまして…」
うーん。
それは、私が検診をしたので、他の歯科医師より厳しい評価になってしまったということでしょうか?
そして、今年は全国平均を上回らないように、検診をしてください、という忖度を促されているのでしょうか?
私は大人げなく、ちょっぴり不機嫌になりました。
もちろん、全国平均を上回っていることは、学校としては不名誉なことなのかもしれません。
でも、早くに矯正が必要と分かれば、対策もできるし、子どもだって将来良い歯ならびになれるわけですよね。
もちろん、要矯正の紙をもらっても、さまざまな事情で「矯正をしない」選択をする患者様もいらっしゃるとは思います。
それでも、何も知らされずに大人になって、「実は小さいころに矯正しておけばよかった」と知らされるよりは、要矯正であることを知識として頭に入れておく方が良いと思うのは、私だけでしょうか?
歯科検診の結果は全国で集計をして統計を取るので、基準を無視して意図的に要矯正の数を増やすことは望ましくないですが、できるだけ基準に則って検診を行った結果、要矯正治療と判断された患者さまが多かったからと言って、別に問題はないと思いませんか?
医療従事者としての葛藤
昔、ラジエーションハウスという放射線科医と検査技師のドラマがあったのですが、そこでも似たような話題がテーマとなった回がありました。
乳がんの疑いがある患者様がいるのに、「乳がんである疑いはあるものの、そういう状態の人はたくさんいるから」という理由で、検査結果を「異状なし」とする風潮があったのです。
そうしないと、病院は疑いのある患者様でごったがえし、本当に検査が必要な緊急を要する患者様が検査を受けられないから、という理由で、異状なしとしていたのです。
でもそれって、正しいのでしょうか?
「もしかしたら乳がんかもしれませんが、違う確率が高いです。さらに精密な検査を受けるかどうかは、患者様自身でご検討ください。」とお伝えすることが、医療として正しいのではないか、そう思ってしまいます。
(もちろん医療現場のひっ迫なども考えなければなりませんので、正解は分かりません。また、ここに書いた乳がんのお話はテレビドラマですので、現実世界でも起きていることなのかは分かりません。)
学校検診の矯正に関する診査はかなり甘い
いかがでしたでしょうか。
少し難しい話を書きましたが、学校検診では、100点満点で20点ぐらいの歯ならびの子が「要矯正」と紙をもらうような仕組みになっていることは、知っておいていただけると嬉しいです。
学校検診の紙をもらわなかったり、要矯正ではなく「要観察」と書いた紙を渡されたからと言って、問題がないということではありません。
要観察の紙をもらった方でも、お子さんの歯ならびが気になる場合は、矯正歯科で相談されることをおすすめいたします。
今日もお読みくださり、ありがとうございました!