BLOGしょう先生のブログ
おはようございます。今日もお越しくださり、ありがとうございます。
今日は、子どもの格安矯正について、記事を書きたいと思います。
目次
家探しと似ている歯医者探し
どの歯医者に行ったら良いのか?を考えるのは難しいですよね。
私は、歯医者選びは家選びと似ているのではないかな?と思っています。
【関連記事】第22-1回【家探しと似ている】良い矯正歯科の探し方【矯正コラム】
子どもの矯正を始めるにあたり気を付けることも、家選びに似ているのではないかなと思っています。
こんな家は嫌だ
新婚のジュンコ
ここに新婚のジュンコがいます。
ジュンコは今、幸せいっぱい。
「一緒に住む家を買おうか。」
なんて素敵な響きにつられて、家を見に来ている最中なのです。
山の手にある広い一軒家。
駅近のタワーマンション。
海風が心地よいシーサイドマンション。
どれも素敵なのですが、その中で1つ、とっても安い家がありました。
その家は、特に他の家と比べても遜色ないクオリティーなのに、なぜか2割ほど安いのです。
「決めたわ。私、これにする。」
見る目のあるジュンコ
購入を決めて不動産屋に行くと、不動産屋からはこう言われました。
「お客様、お目が高いですね!この物件は人気で、抽選になっているんです。」
ジュンコは興奮しました。
「やっぱり。私、見る目があるんだわ。」
そして1か月後。
ジュンコはみごと抽選に当たり、新しい家に移りました。
新しい家はとってもきれいで、何をしても気持ちがよく、本当に引っ越して良かったと思いました。
3年目のジュンコ
新居に移り、3年経ったある日のこと。夫のタクヤがこんなことを言いました。
「おい、この家なんか傾いてないか?」
「えっ、そんなことはないと思うけど…」
タクヤは息子とビー玉で遊んでいたのですが、ビー玉が勝手に転がっていくのです。
何度置いても、ビー玉は同じ方向へ。
ジュンコは何も言わなかったのですが、思い当たる節はありました。
最近、マンションのママ友で集まっても、壁に亀裂が入っているとか、原因不明の頭痛に悩まされているとか、そういう話題が頻繁に出ていたのです。
もしかして…
気づくジュンコ
そんな不安は、やがて的中します。
物件に耐震偽装が見つかり、構造に欠陥があったのです。
「この家が安かったのは、安いだけの理由があったのね…」
マンション購入から3年以上経って、ようやく安さの理由に気づいたジュンコでした。
安いものには理由がある
いかがでしたでしょうか。
私は矯正医なので、さまざまな知人からお子さんの矯正の相談を受けます。
その中には、すでに格安の矯正を始めてしまっている人もいます。
安い矯正治療を選び、受けられているお母様には、ある共通点があります。
「とりあえず◯◯だけやって、その先は後で考えたらいいかなと思って…」といった感じで、「とりあえず」とよく言う。
「なんかたった数ヶ月でだいぶ変わったの!」と自分の選択に誇りを持っている。
この辺り、思い当たる節がある方は、要注意です。
とりあえずの治療は危険
木を見て森を見ず、という言葉がありますよね。
物事の1部分に気を取られて、全体を見失うことを言います。
歯科でも似たような現象があります。
歯科で言う「木」とは「1本1本の歯」です。
卒後すぐの若い先生は、まずは1本の歯を治せるように訓練をします。
小さな虫歯治療とかから練習を始めるわけですね。
そして、複数の歯を扱うようになり、下の歯全体、上の歯全体などを診るようになり、最後にお口全体を診る訓練をします。
歯科で言う「森」とは、「お口全体」を指します。
お口を超えて、お顔全体と言っても良いかもしれません。
さらには「全身」を診るようになる口腔外科などもあります。
壮大な森ですね。
矯正治療は、お口全体、すなわち「森」を扱う分野になります。
ある1本の歯を治すとかではなく、全体的なバランスを改善していく治療です。
ほとんどの若手が木から学び始めるので、森を勉強するのは最後になります。
矯正歯科や口腔外科は、最後の方に学ぶジャンルと言えます。
大学では矯正についてほとんど習わない
実は、大学6年間では、矯正についてほとんど習いません。
もちろん、カリキュラムは存在していますし、歯科矯正学について座学もあります。
実習もあります。
でも、木を診ることもできない学生に、いきなり森のことを教えても、なんのことか全然分からないんですね。
私も、全然意味が分かりませんでした。
木登りができない子に、この森は何ヘクタールあって、中央に大きな沼があって…とか言っても、ピンとこないのと同じです。
だからこそ、専門性の高い分野として、独立して存在しています。
【関連記事】第74回【情報操作に気を付けて】どうやったら歯医者になれるの?【矯正コラム】
お子さんでギャンブルをしますか?
今、私たちの目の前に、木が生い茂っています。
道を作って進まないと、この森を抜けることができない状態です。
あなたはどうしますか。
「道を作るにあたって邪魔だから、目の前の木を切れば良いじゃないか!」と考えますか。
これは、木を見て森を見ず的な考え方です。
「目の前の木を切ったら直線距離では早いけれども、森の形からするとこの先には沼があるから、多少迂回して右側へ進んだ方が結果的に早いかもしれない。」
と、ゴールまでの道筋を考えるのが矯正の考え方、森を見る考え方です。
つまり、とりあえずこの装置だけ使ってみましょか、というのは、基本的にあり得ないわけです。
もしかしたらその先に道が開けるかもしれませんが、沼が広がっているかもしれない。
そんなことを考えずにまっすぐ進んでしまう怖さを、知って頂きたいと思います。
もちろん、うまくいく子もいる
もちろん、木だけを見て直進しても沼がなく、まっすぐ道が開ける子もいます。
でも、それはギャンブルなんです。
一度来た道は戻れない
先ほどの森の例えなら、もし木を切って前に進み沼が現れたら、戻れば良いかもしれません。
しかし、矯正治療に関しては、「戻る」という選択ができません。
なぜなら、お子さんは時々刻々と成長しているからです。
時間を元に戻せないのです。
また、歯は完全に元の位置にリセットしてくれません。
「後戻り」と言って、歯は元の位置に戻ろうとする性質はあるのですが、完全に元の位置に戻るわけではありません。
そのため、変に触ってしまうと、余計にリカバーが難しいという難点があります。
最初にどのような治療計画を立てるかが、非常に大切です。
うちの子は大丈夫やねん!という罠
「そんなこと言っちゃって、うちの子は大丈夫よ。だって、最近すごい変わっているもの!」と思われたお母さま。
実は、ものすごく初心者が矯正治療をしても、前歯のガタガタは比較的よく取れるんです。
「拡大」と言って、横に広げていけば前歯は結構きれいになります。
なので、格安矯正で満足されている親御さんが多いのは事実です。
でも、その裏で、奥歯が全然噛んでいなかったり、拡大しすぎて変な形の歯列になってしまっている人も少なくありません。
ですが、前から見ると分からないんです。
これが、恐ろしいところです。
どうしてこんなことを書くの?
今日の記事を読んでくださった方は
「ああ、きっと矯正医として、治療は矯正歯科で受けてほしいから、アピールしているのね」と思われたのではないでしょうか。
実際、そうなんです。
というのも、矯正歯科ではないところで小さいころに矯正をして、おかしくなってから矯正歯科へ来院される方が多いんです。
しかも、そういう方は、全く矯正をしていない方よりも、難しくなっているんです。
沼にはまっちゃっているんです。
どうして最初にここへ来てくれなかったんだろう…と思ってしまうんですよね。
その段階で、お母さまから言われるんです。
「とりあえずできるとこだけやって、成長を見て難しかったら矯正歯科に紹介するって言われてたんです。」と。
すごく複雑な心境になります。
最初から矯正歯科に行っておけば、成長前に難しくならない状態にできたのに…と思うことも少なくありません。
最初のマンションの例えと同じです。
安いと思って買ったマンションが傾いていたら、新しいマンションを買わなければなりません。
そうなると、結果的に出費は多くなります。
矯正治療も同じです。
安ければ悪い、高ければ良いということはありません。
でも、安い矯正には、必ず理由があります。
最後まで診てもらえるのか、必ず確認をしましょう。
難しくなったら矯正歯科へ紹介します、と言われたら、黄色信号です。
治療を始める前に、よく検討していただくことを、強くお勧めして、今日は終わりたいと思います。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!